出産の時のことをお話しします

塚ちゃん、ママになる。

100日を迎えて

一雨ごとに秋が深まる時期になりましたね。
日々の気温変化も大きくなっていますが、みなさまお変わりなくお過ごしでしょうか。

赤ちゃんは先日、晴れて誕生100日を迎えることができました。
この100日を経て、できるようになったことがたくさんあります。
例えば、私が少し離れた所に行くと、結構遠くまで目で追ってくれるようになりました。
他にも、「うーうー、あーあー」とたくさんおしゃべりしてくれるようになりました。

そんな一つ一つの成長が嬉しいのですが、ほんのり寂しさを感じることもあります。
少し前までは、一人で寝かせていると「あい………あい………」と心細そうな声を出して私や夫のことを呼んでいた赤ちゃん。
そのたびに駆け寄り抱っこして「寂しかったね、大丈夫よー近くにおるよー」なんて声をかけていたのですが、最近は様子が変わってきました。
寝返りや指ちゅぱちゅぱができるようになったことで、自分で気を落ち着かせるようになったんです。

もちろん「お腹すいた!」や「眠たい!」といったことは泣いて教えてくれますが、いつの間にか、あの「あい(寂しい)……あい(寂しい)……」を聞くことはほとんどなくなっていました。
それに気づいたときに感じた、そこはかとない寂しさ。

これから先、数えきれないほどの「そういえばあれが最後だったな」があるんだと思います。
腕の中で大泣きする赤ちゃんも、そのうち大きくなったら私を求めて泣いてくれなくなるし、もっと大きくなったら、泣きたい事があったとしても私に隠れた所で泣くようになるんだと思います。

そう思うと、赤ちゃんのギャン泣きする姿まで愛おしく感じられて、ぎゅーっと抱きしめて頬ずりしたくなります。

もちろん、いつでもそんな心の余裕たっぷりというわけではないんですけどね。笑

さて、今回はちょうど100日前の頃。
出産当日のことをお話しようと思います。

「ぶつん!」は突然に

それは出産予定日を3日ほど過ぎた7月13日のことでした。
陣痛の兆候もなかなか見られず、お医者さんから促されるままウォーキングに励む日々を過ごしていた私。
あぁ今日も特に生まれる気配はなかったなーなんて思いながら夕方お風呂に入り、ソファでゴロゴロしていると…

……ぶつんっ!!!!!!!!

そんな音とともに、お腹の下の方で何かがはじけて千切れたような感触がありました。

思わず「わあっ!!!」と声を上げ、夫に「何!?今の音!」と尋ねると、きょとんとした表情。

どうやら私にだけ感じられた音のようです。

何ごと、いや、それより赤ちゃんは大丈夫!?なんてオロオロしていると………なんやかんや色々と出てきました。

「あ、これ破水か!」と気づいた瞬間です。

すぐに病院に連絡して、車で向かいました。

いよいよか

病院に到着し診てもらうと、破水で間違いないとのこと。

「ここからはもう入院です。お風呂にも入ってはいけません」

この日は海岸沿いをウォーキングして潮風に当たっていたので、早めにお風呂に入っておいてよかったなぁなんて呑気に思っていました。

ただ、次の言葉でどきりとしました。

「少し羊水が濁ってるから…ちょっと赤ちゃんがしんどそうかな?」

どうやら羊水の濁りは、赤ちゃんが少し苦しくなっている“可能性”を示すようです。

まだ陣痛も弱く長丁場になるかもしれないと言われましたが、もう早く出てきてほしい思いでいっぱいになりました。

その思いが通じたのでしょうか。

布団で横になっていると、だんだんと陣痛が強くなってきました。

出産の痛み、どんなもんかいね

入院した産婦人科では、普通分娩か無痛分娩か選択することができましたが、私は今回、普通分娩を選びました。
選ぶときにメリット・デメリットなど色々と調べましたが、おそらくそれらはあまり関係ありません。
普通分娩を選んだ最終的な理由をひとつだけ挙げるとすれば、それは「好奇心」だと思います。

腰を鈍器で殴られるような…
鼻の穴からスイカを出すような…

ほんまかいな、と言いたくなるような言葉で表現される出産の痛み。
とはいえ太古の昔からずっと女性たちが経験して乗り越えてきた痛み。
せっかくなら、それを体験してみたいと思ったのです。

しかし、深夜2時の私は、早くも心がくじけそうになっていました。

…………いたい!!!

数分おきにやってくる痛みの波が、時間を追うごとに強まっているのが分かりました。

これがまだまだ序盤の痛みでしかないなんて信じたくありませんでしたが、うずくまって耐えるしかありませんでした。

そうしていると突然、今までとは明らかに質の違う感覚が襲ってきました。

……………!?!?!?

その衝撃に一瞬たじろぎましたが、直感しました。

これが「いきみたくなる」だ…!

「いきみたくなる」とはなんぞや

妊娠中、産婦人科が開催する「出産の流れを学ぶ教室」に参加しました。

「いろんな段階の出来事がばらばらに並べられているので、正しい順番に並べ直してみてください」

ほうほう。えっと…

・陣痛の間隔が早くなる
・胎盤が出てくる
・破水する
・子宮口が開く
・いきみたくなる

ん………?
「いきみたくなる」………!?!?

客観的な事象を表す言葉が並ぶ中で、燦然と輝く「いきみたくなる」。

えっ…いきみたくなる?
なにそれ、「いきみたい」っていう気持ちの話?
え、みんな共通してそのタイミングでそんな気持ちになるの?
私もそうなの??

この時、頭の中ははてなマークでいっぱいになっていました。

でも、よく分かりました。

決して気持ちの問題とかではありません。

言うなれば、“衝動”。

私の意思とは無関係に、お腹自体が激しい衝動を持って暴れ回っているような感覚です。

勝手にいきんでしまうというか、いきめば少し楽になることは何となく分かります。

ですが、子宮口が開ききっていない段階でいきんでしまうと、産道が傷ついたり裂けたり、赤ちゃんが苦しくなってしまったりする危険があるそうで……

もう何がなんでも、衝動を抑え込むしかありません。

夫がストローで水を飲ませてくれたり、腰をさすってくれたりしてサポートしてくれています。

助産師さんもお尻を圧迫したり、体勢を変えさせたりして楽にしようとしてくださっています。

「はっはっ、ほー、と息を吐いて力を抜いてください」

……はっはっ、ほー??
ひっひっ、ふーなら聞いたことあるけど、はっはっ、ほー!?!?
それは練習してなかったぞ…!?

そんな戸惑いが脳裏をよぎりつつも、「助産師さんの言うことをちゃんと聞く」ことが何よりの安産への道だと信じて、はっはっほーとのたうち回りながら、ひたすらに耐えました。

ちなみに、いま冷静に振り返ってみても、この「いきみたくなるのを我慢する」時間こそが、出産の痛みのハイライトでした。

「いきみたくなる」…侮ってごめんよ。

ついにその瞬間がきた

外が明るくなってきた午前6時頃。

「子宮口が全開になりましたね。陣痛に合わせていきんでいいですよ」

その助産師さんの声が、祝福の鐘の音に聞こえました。

いきみたい時にいきめることが、こんなにも楽なんて…!

もちろん痛み自体は続いていますが、これなら何とか頑張り切れそうだと希望が湧いてきました。

ただ、峠を越えた安心感で、私の緊張の糸が少し緩み始めました。

さらに、一晩中痛みに耐え、全身に力を込めて何度もいきむ中で、疲れも相当たまっていました。

陣痛の波の合間に、たびたび薄れる意識。

そのうち、1分程度だった陣痛の間隔が、2分、3分と空くようになってきていました。

その時、再び助産師さんの声が。

「だんだん、陣痛が遠のいてきてるね……」

その言葉で、私の心に最後のスイッチが入りました。

「今この場にいる誰よりも苦しいのは赤ちゃん。
 暗くて狭い所を通って命がけで出てきてくれようとしているのに、
 私が頑張らなくてどうする!!
 私が助けてあげなくてどうする!!」

そこからはもう、一球入魂のような気持ちで、陣痛が来るたびに「もうこれで産む!絶対産む!」と力を込めていました。

どれくらいその時間が続いたでしょうか。

周囲の様子も慌ただしくなってきたとき、夫の声が聞こえました。

「そこ、見て!」

目を開けて促された方を見ると……

横たわった私の体の20センチほど上のあたりに、でーんと掲げられた赤ちゃんのシルエットがありました。

だいぶ出てきたような感覚はありましたが、まさかもうそんな所にいるなんて思っておらず、口あんぐり。

そのとき、赤ちゃんの元気な泣き声が響きました。

「おめでとうございます!!!」

助産師さんや先生たちの言葉とともに、力いっぱい泣く赤ちゃんが私の胸の上に。

2024年7月14日、午前9時12分。

無事にこの世に生まれてきてくれた安堵に、ようやく全身が包まれた瞬間でした。

胸の上でびちびち暴れながら一生懸命に泣く赤ちゃんが可愛くて、涙がにじみました。

ちなみに、最後の一部始終を夫がGoProで撮影してくれていたので、私の口ってそんなに開くんだってくらい、あんぐりと口を開けている様子が撮れています。

助産師さんたちがその顔に「ふふっ」とほほ笑んでくれていました。

忘れることと忘れたくないこと

出産にかかった時間は、破水から約13時間。
初産婦としては平均的で、安産だったとのことです。

それを支えてくれたのは、やはり助産師さんです。

常に冷静で、私に適切な指示を出してくださいました。
少しでも痛みと体のダメージを和らげるため、適格な処置をしてくださいました。
また、私は仰向けよりも横向きの姿勢が楽だったことから、横向きになった私の重たい脚をずっと肩に担いでくださっていました。
その姿は女神様に見えました。

それから、夫。
いつ陣痛や破水が来てもいいように仕事を調整してくれていたので、不安なく臨月を迎えることができました。
そして破水を迎えてからは、一晩中、隣でサポートしてくれていました。
特に印象に残っているのは、陣痛が激しくなってからのこと。
私は痛みを耐えることに精いっぱいで、自分で判断してナースコールを押す余裕を失ってしまっていました。
これくらいの痛みで呼んじゃだめなんじゃないか…と躊躇してしまったのもあります。
夫が苦しむ私を見て落ち着いて判断し、ベストタイミングで助産師さんを呼んでくれたので、本当に助かりました。

それだけではありません。
出産にあたり、アドバイスをくださった職場の先輩方や友人たちがいます。
また、たくさんの方から励ましのお言葉も頂いていました。
それらの言葉が、陣痛の合間に浮かんでは消え、浮かんでは消え…を繰り返し、数珠つなぎのように私の精神力をゴールまで届けてくれたように思います。

出産経験者のみなさんは、「ものすごく痛かったけど、その痛みって不思議と1か月もしたら忘れるんよね」と言っていました。
1か月が経った頃、「いやいや、忘れられんじゃん!」なんて思っていましたが、100日経った今、痛かったことは覚えていても、痛みの感覚の記憶は確かに薄れつつある自分に気づき、ふふふと笑ってしまいます。

ありがたいことに、痛みは忘れる。

でも、自分の力だけではなく、たくさんの支えがあったからこそ無事に出産を遂げられたのだということは、ずっと忘れずに心に刻もうと思います。

塚原 美緒

気象予報士・防災士

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気象予報士・防災士。 2017年から夕方の情報番組「テレビ派」の天気予報や防災コーナーを担当。 2024年5月から産休に入る。 初めての出産・育児で学ぶこと...

プロフィール
  • コメント ( 4 )

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  1. コウズィ

    産婦人科のスタッフ、旦那さんのサポート、そして塚ちゃんのママになるまでの強い気持ち、読んでいて胸アツになりました。自分の子供たちの時を思い出しました。これからもご夫婦で子育て頑張って下さい。

  2. ぴてくすエンジン

    ありがとうございました。昔、妻から聞いたことを思い出しました。また、文章の中に幸せそうな言葉がたくさん使われているのは塚原さんらしいなと感じました。これからも楽しいこと、つらいこと、悲しいことといろんなことが起こると思います。でも、やっぱり家族っていいなと思う今日この頃です。これからも子育て、家族生活頑張ってください。

  3. イッケー

    百日祝いを迎えられたんですね
    ㊗️おめでとうございます💕
    息子の時のお食い初めが懐かしいです
    そして出産時のお話
    破水って音がするんですね!
    私は病院で破水させられたので
    いつの間に?でした😅
    子供の成長は
    毎日変わらないようでも早くて
    色々な気付きがありますよね
    愛しい日々を楽しんでください✨

  4. マサ太郎

    自分達は子宝には恵まれなかってので詳しくはわからないですけど皆んなそうして大人になって行くんだよね。お母さんに感謝しないといけないですねー♪♪♪

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