増えている不妊症…不妊治療を経験したわたいき編集部員が助産師に聞きました

HEALTH

近年、不妊症に悩む方が増えています。わたいき編集部の筆者Aも30代後半で不妊治療を経験。辛い時期を経て一子に恵まれましたが、働きながらの不妊治療は本当に大変でした。どうして私は中々妊娠できなかったのか。あの時私はどうしていたら良かったのか。いまだにふと、疑問が頭をよぎります。

人それぞれ、体や状況が違ってなかなか共有しづらい話題ですが、少しでも何かの参考になればと思い、わたいきメディカル&ヘルスパートナーの田中助産師に聞きました。

今回話を聞いたメディカル&ヘルスパートナーは


田中美佳(れいこ助産院 / 広島市南区宇品神田)

広島市出身。都内で助産師教育を受け、総合病院で勤務の後、「地元広島の母子の支援がしたい」と考えUターン。自身の出産体験から地域における継続支援の重要性を感じ、2007年開業助産師となる。2020年よりMY助産院で勤務、2022年れいこ助産院2代目院長となる。

「わたしの家で赤ちゃんを産む わたしの力で赤ちゃんをはぐくむ」をモットーに、“家族が主役”のいのちのストーリーをサポートしている。女性の持つ力、赤ちゃんの持つ力を発揮し幸せなお産をすることが、少子化をはじめ社会問題の解決につながると考えている。

専門分野:
自宅出産、妊娠期からの継続支援、母乳育児支援、性教育


A:私は結婚して子供が欲しいと思ったときに、なかなかできなくて自分を責めた時期がありました。最近は不妊の方が増えていると聞きますが、どうしてでしょうか?

田中助産師:昔は10組に1人が不妊と言われていましたが、今では4組に1人と言われています。不妊の定義が変わったこともあります。昔の不妊症の定義は2年間の夫婦生活で妊娠しない場合でしたが、今は1年になりました。

:定義自体が変わったんですね。生活環境の変化も影響していますか?

田中助産師:はい。男性の精子は熱に弱いので、サウナやぴったりとしたズボンも良くないと言われています。女性の場合は社会で活躍する女性が増え生活リズムの乱れなども関連しているかもしれません。

A:私も、当時ネットで色んな情報が飛び交っていて、いろいろなことに原因を探ってしまって苦しくなりました。

田中助産師:そうですね。男性は熱に弱い、女性は寒さに弱いというのは知っている方も多いかなと思います。不妊に関する相談も受けますが、不妊に関する相談を専門とする助産師もいますよ。気になる方は探して、相談してみてください。

A:いざ子どもが欲しいと思った時に、できない、なぜ!?と、その時初めて自分の体と向き合う人も多いと思いますが、そうならないために、私は早期の教育も大事だと思います。今の日本の教育は足りていると思いますか?

田中助産師:足りていないと思います。海外では包括的な性教育が行われていますが、日本ではまだまだです。

A:私は生理は始まったころからずっと順調だったので、まさか子供ができないとは思ってもいませんでした。働いていると、自分が望むタイミングで出産できなかったら、キャリアや人生設計そのものに影響しますよね。働く女性がますます増えていく時代だからこそ、しっかりと教育に組み込んで欲しいなと思いました。

田中助産師:そうですね。女性が社会で活躍するためにも、性教育が重要です。最近徐々に生理についてオープンに話せるようになってきましたが、それは良いことですよね。

A:働く女性は増えていますが、働きながら体調管理をするのはとても難しいです。特に、家事の分担割合はいまだに女性の方が高い場合が多く、体調管理をするための食事作り自体もストレスになってます(笑)。

田中助産師:そうですね。文明が発達すると子供の数が減るという統計もあります。女性の社会進出は良いことですが、産む性は変えられないので、社会全体で見直す必要があります。育てたいと思う人がちゃんと育てられる社会にしないといけません。

欲しいと思ったらすぐに妊娠できると思っていた私。不妊治療ののち、36歳でようやく一子を授かりました。しかし、喜びもつかの間、出産直後にも「こんなはずではなかった!」を経験することに…

A:出産後に母乳が出ると思っていたのに出なくて、初日から粉ミルクに頼ることになりました。私のイメージした育児像とはかけ離れていて、ショックでした。退院してからはもっと不安で、小さなわが子が飢えているんじゃないか、死なせてしまうんじゃないかとすごく神経質になりました。しかし、母が助産師さんを自宅に呼んでくれて。お乳をほぐすと、天井に届くかというくらいすごい勢いでぴゅーっと出たんです。私も出るんだ、これでお乳をあげられると涙が出ました。

田中助産師:助産師がほぐしたから母乳が出たのではなく、お母さんの体が素晴らしいからです。妊娠中や産後のケアについて、もっと早く知っておきたかったという方は多いです。母乳が出ているかどうか不安な方もいますが、まずは、出産直後から赤ちゃんにお乳を吸わせることが大事です。

A:今なら吸わせることが大事、という意味がわかります。私もただ吸わせることで、徐々に母乳の量も増えて、気が付いたら子どもがころころとかわいく太っていました。赤ちゃんも最初はお乳を飲むのが下手なんですよね。当たり前なんですけど、産んだばかりの私にはまったく余裕がなく、そんなことを思いもしなかった。今思えばそれが親子の初めての共同作業で、何度も何度も繰り返すことでふたりとも上手になっていったんですね。それがわかるまでは、ようやく妊娠できたと思ったらお乳も出なくて、自分が欠陥だらけの人間のように思えて。ただ、そうした苦しみがあったからか、子どもが自分から飲まなくなるまでは母乳を続けようと思い、結局1歳半までやりました。肌を密着させて母乳をあげている時が、今ではとても幸せな時間だったと思います。

田中助産師:まだまだそういう情報が必要な人に届いていないと感じます。妊婦さんを対象にお話し会をしても、中々集まりません。産後のお母さんなら、妊娠中から産後のことを知っておくことの必要性を感じておられますが、妊婦さんはまだ働いている方も多く、産休に入ると出産準備に忙しいです。母乳の話に関心があるのは経産婦さんが多いですね。

A:一方でインターネットなど、情報がありすぎて何が正解か迷いますよね。

田中助産師:そうですね。リテラシーが大事です。情報に振り回されず、自分に合ったものを選ぶ力が必要です。例えば、⺟乳は血液から出来てるので、3食ごはんを食べることが基本となります。貧⾎になると母乳の分泌だけでなく、切迫早産や微弱陣痛、産後の子宮の戻りが悪くなることもあります。こうした場で情報を共有して、みんなで健康な生活を送りたいですね。

A:私たちはもっと助産師さんに頼ったらいいですよね。病気ではないから病院には行きづらいけど、悩みや相談に応えて寄り添ってくれるので、ネットで近くの助産院を探してみるのもアリだと思いました。最後に、助産師としてみんなに伝えたいメッセージをお願いします。

田中助産師:人それぞれいろいろな命の形があり、正解はないということです。助産師が行う性教育でも、誰かと比べるのではなく、自分自身がそのままで100点満点なんだということを伝えることを心がけています。

A:ありがとうございました。

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田中美佳

開業助産師

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